1冊は好きな新書を己の手で掴み取りたいよね

店頭が日々それなりに忙しかったりめちゃヒマだったりするんだけど、スタッフに「おすすめの本教えてくださいよ」と言われて、「しかし君の方が読書量多いやんけ!」などとやりとりをしており「新書って誰も知見ないよね」という話になった。

確かに当店スタッフは古典、純文学、何らかの賞を取った文学、ミステリ、など様々な分野に知見のある人が多い。一方でわたしはどれも全然である。

なんてこったい!誰も新書読まんやんけ。

考えてみたら新書って「わたしはこのジャンルや著者に興味があるんだ」という人しか手に取らず、わたしなどは大学在学時「なんか教科書の副読本だね」という程度の気持ちだった。なんなら読むのが辛くて忌まわしい種類の本だったな。

しかし時たま「あっ面白そうじゃん」と思って仕入れの際に見たり、休日に他店の観察をしている時に「なにこれ良いじゃん」と思って手に取ることが増えた。

とはいえ「わたしは新書を読んでいる人間です」と言い切るレベルではないが。

まあでも多分みんなあまり手に取らないから相対的に「新書をよく読んでいます」と言ってもいいんじゃないかなとも思ってきた。だから自分なりの新書を選ぶコツを記しておけば誰かが新たな知を手に入れることもあるかもしれないしさ、そう言う気持ちで選ぶコツを自分なりの根拠を述べつつ記してみるよ。

 

▧著者が小説も書いている

わたしが思う新書のつまらなさに「ただただちょっと読みやすい論文みたいな文である」というのがある。

著者が言いたいテーマについてはめちゃくちゃ興味があるのに、栄養価が高いだけの味のない飯を食わされているような気持ちになるというのが感覚として近い。

で、新書とはそういうインテリジェンスな存在でも良いのだけどいきなりインテリジェンスに近づくと小説で慣れているわたしたちはイヒィ〜ンとなるのでなるべく著者名を見て「あの小説書いてる人だな」というのが浮かぶ人だと超良いです。「マチネの終わりに」を読める人なら平野啓一郎とかを選べばいいし、なんか小川洋子もちらっと新書出してたと思います。

小説を書く人の新書は、新書自体の簡潔さを持ちながらもちゃんとちょっとしたオチや盛り上がるヤマを作っていたり、一段落の量がちょ〜うどいいんです。

 

▧目次に興味が湧くやつが2~3項目ある

わたしは読んでいるうちに「クソつまんねぇわ。や〜めた」ってなることありがちなんだけど、

大抵が

・著者が述べたいことについての思想が合わない

・自分語りの部分の年代がわたしと合わなくてつまらなくなる

・あまりにも無機質すぎてつまらなくなる

みたいなかんじ。なので買う時は目次を読むようにしている。うす〜く「まあ…気になるテーマではあるが…」と思う程度なら買わないけど、その気になるテーマを自分が好きなワードチョイスでまとめてあるものが2~3個あればかなり良い。それで選んだ岡田尊司著「死に至る病 あなたを蝕む愛着障害の脅威」を今読んでいる。これは当たりだった。

 

▧ひと項目読んで次読みたくなる

新書というのは長い箇条書きの本だなと思っている。で、その1箇条が自分が読書したいなというタイミングで読んでみてしんどくないかを試す。アホほど売れたんだけど、堀江貴文の新書を見てみてほしい。堀江貴文本人に対する是非はあろうがあらすじも簡潔で、1~2箇条を読むのに恐ろしいほど時間がかからない。かといって面白くないわけではない。

個人的には堀江氏は新書を出す度に自身のご尊顔を2/3くらいのサイズで表紙に載せるので「やめてくれや」と思っているがこのちょうどいい塩梅の文才はかなり認めている。

 

▧(これはオフレコだが)新書の整理番号が900~1000である

後半であれば後半であるほど最近に出たもので字が視覚的に見やすいのはさることながら内容も現代に即したものになっているのでちゃんと身近な話を読める。番号が1とか2だとオールドな世代から見た昨今の話や展望を述べられているので「残念ながら世界はお前の思うようにはならなかったよ」と思いながらそっと本を閉じることになる。

なんでオフレコかというとあんまり当店に在庫がないからだ。悔しい。

 

▧装丁が他のと違う

簡単に言うと横の新書と違う色をしているやつの話をしているんだが、その新書の外装カバーをさ、ちょっとめくってごらんよ。もう1枚外装カバーがついていないかい?

それは一番手前のカバーは実は「全帯」というやつで「売れてるから気合い入れたろ!」とか「このタイトルなら目立たせたら超売れるやろ!」という出版社の気合いの入り具合のようなものだ。つまり面白さ折り紙つきということですな。興味あるジャンルなら是非手に取ることをおすすめするよ。

 

▧推しの出版社を探す

わたしはイースト新書Qシリーズが好きです。なぜかというと賢いお子様でも読めそうというくらいの平易さと行間とカバーデザインの良さ(新書にしてはめちゃくちゃかわいい)があるからです。ゆうてあまり冊数出てないんですけどね。もっと出してほしい。「よくわかる思考実験」がバチバチにいい。猫についての本もあったはずです。あとカレーについてのやつもあってそれが少し気になっています。

あと講談社現代新書だったかなあ。色のついた四角が題名と著者名の間にあるやつ。あれはタイトルに目を引くものが多いのでチマチマ見ています。前に挙げた平野啓一郎の新書たしかこの出版社です。

理系ならやっぱりブルーバックスでしょうかね。文系としては頭のいい人間になんとかギリわかるかなというぐらいのレベルで辛いですが、内容が良いことはわかる。

 

このくらいでしょうか。

あ、あと「スマホ脳」は買うとか買わないとかではなくページをめくってみて欲しいと思います。文字で書いてあるのに「それは図です」というかんじのやつが最序盤にあり、しかし視覚に訴える本として画期的で面白いなあと思います。思想の解釈が一致しないので「それは違くない?」となり読破出来ませんでしたが普通に小説とか書いてみてくんねぇかな。多分円城塔みたいな風味になると思うからさ。

 

どう?少しは参考になる?うちに限らず本屋の新書コーナー見てみたくなった?

みなさんも面白かった新書とか「こう選んだらいい新書ゲットできた」などあれば是非教えてね。