好きじゃない本の話

誰かが語る 好きじゃない本の話 を聞くのが好きだ。

えっ何?と思われるかもしれないが、例えば当店では一見価値がないとネット上で言われている本でも個人的に良い...と思った本は少し買取するようにしている。この仕組み自体も結構良いなと思っている。

が。

某アーティストの自伝が買取査定に含まれていて懐かしいなと思ってそのように買取してみた。

品出しの棚にぽいとそれを入れようとしていたら

「うわ」

ともうひとり別の作業をしていたスタッフが言った。

「懐かしくない?結構好きでさ、」

というと

「わたしはあんまり好きじゃないんですよね。私生活があまりにひどくて」

と言った。 好きじゃない の感情を持ちながらなにが好きじゃないポイントなのかちゃんと把握するほどには詳しいのが良かった。なんとなくいけすかねぇな〜でも良いんだけどちゃんと理由まで知ろうとしている(または知ってしまったのかもしれないが)という姿勢が凄く好きだなと思った。

 

わたしもそういう 好きじゃない本 は結構ある。

自己啓発系の これをしたら絶対良くなる! みたいな本なんかは「人にもよるだろうがよ」と思う一方で、多分その人のさす方向性が合わなかっただけで これをしたら変わりばえはするかもしれんよ という気の抜けたテイストなら あ〜、まあね。 と思うだろう。なんとも身勝手である。

そもそも自己啓発系の本ってそういうもんだと思う。山のようにある中から心にささるのをひたすら探すみたいなさ。そういうのがあるよね、自己啓発ジャンル。

 

あとは、こういう最強に身勝手な理由で好きじゃなくなった本のエピソードを他人から聞きたいと思って紹介するけど、前にほんの〜り好きだった人に「この本みたいに生きたいんだよね。よかったら読んで。」とおすすめされた本があった。

もう、もうね。本屋で裏表紙のあらすじを読んで本棚に戻した。

わたしが初速で好きになる人は夢想家かと思いきや面の皮を剥いだらただただ嫌なことから逃げたいみたいな人である事が結構多い。いい歳なのでそろそろ識別出来るようにしたいのだけど。

それはさておき、その作品は主人公が嫌なことから逃げてぬるま湯に浸かっている人生がなんとなく許容されている理想郷が描かれていてこの物語の世界の住人はそんなクソみたいな主人公の本質に気付くことがなく主人公と同じ夢を見続けている。ラブコメのが1000億倍マシやんけと思ってぱらぱら眺めて終了しました。

夢想家と思っていたけどなにか違和感がある件の人の性格がすんなり腑に落ちた気がしました。この本のように生きるのは現世では難しいから死後の世界ではそうなれるといいねと思いました。

まあ、こういう身勝手な理由で好きじゃないな〜という本のエピソードがある。こんな風に紹介されずになんとなく手に取っていたらまた感想も違ったと思う。そういう面で本を正当に評価していないのは確かだ。でも人間が本を読むって少なからずそういう文脈から外れたエピソードを持つこともあるんじゃないのかしらね。そういうのを知りたい。

むしろこの本を誰かに読んで欲しいという気持ちすらあるよ。わたしよりもこの本に対する嫌悪感が薄まった状態の人がこの本にどういう感想を持つのか知りたい。

なので「あのエピソードの本ありますか」と聞かれたらお出ししますよ。在庫1冊あるので。

ちなみに蛇足ですが、件の人について人格否定をするつもりはなく、恋愛ゲームで攻略キャラかと思ったらお助けキャラだったか〜!いやはや失策!ぐらいのかんじよね。貴殿におかれましては現世で逃げる必要のない幸せが訪れることを願います。

 

とまぁ好きな本のエピソードはあまた聞いてきたんだけれども、それよりも苦虫を噛み潰すように紡がれる好きじゃない本の話のがたまらなく好きという話でした。

なのでみんなも好きじゃない本教えてね!!!偏見と自分語りに塗れたやつをね!!!!