物事の本質は捕まえられない

と、思っている。

物事の本質だと思っているのは物質の形状や性質ではなくて、物事に触れた時の心の動きだ。

それを「本質」と呼ぶのは科学の発展したこの文明では違うのかもしれないが、誰かと交流をしていると人間は触れた物によって心の動きが左右されて生活している生き物だなと結構思う。なので人間と暮らす上では今のところ「心の動き」を本質とみて生きた方がズレることなく生きられる。

 

そんな風に思うのは子どもの頃から夢想的な面があったためかもしれない。

友達に「これはこうだよね」と言っても理解された試しはないし、大人に言うと感性を評価されるのみで、まるで水族館のガラス越し(厚みが50cmもあるらしい)に阻まれているような気がした。

↑こういう「まるで〜みたいな」という例えがわたしにはとても多い。

なんでそんな回りくどい言い方をするのかと言えば、存在する物事には単語では捕まえられない感覚があるからだ。

別に宗教的な事を言いたいのではない。一応宗教は履修したことがあって、それではこの百万光年の孤独からわたしを根本的には救えないことを学んだ。

 

例えば「りんご」を表したい。

いつ手に入れたのか、

またはもらったのか、

どのくらい食べたい時に、

どんな形で、

など価値も形も重要度も固定されない。

時によってまたは人によっても違う。

いつだって名前を付けて固定しようとしている。

物は比較的形が決められているから自分と他者とで解釈が変わりづらいものな方だとは思う。そうとは言え98%くらいは通じ合えない。

 

自分ですらりんごをもらった瞬間にどういう事を感じたのかを気付けない場合もある。

深層心理で「今日もらったりんごは他のよりきっとなんか良かったな」とふんわり思って、感情を希釈していくうちに「朝すんなり起きた時の感覚に近い良さがあった」とか「雨上がりの森に近い」とかそういうものを感じて「その時にもらったりんごのみずみずしさに感動したのだな」と納得する事があったりする。

 

詩を書くべきなのかもしれないが、わたしは詩で伝えたい事はない。

一瞬で通り過ぎるあらゆるものを誰かと体験して、もしそのひとが同じ顔をした時にその感覚が同じであればそれ以上を望まないからだ。

詩にすると過去にあった些細な物事を固定してしまう。声のうわずりや紅潮なども表現できないし。

それに流れて忘れるから美しいと思うし、わたしとその「誰か」にだけわかっていればいい。もし「あの時ああだったことを今でも覚えている」とお互いが思ったならそれはものすごく素敵なことなんだけどね。

これは結構あれだ、老若男女関わらず好きな人に思っている事だ。

思い返せば老若男女関わらず色々な友人や恋人がいたが、その理由のひとつに他人を姿で判断していないからというのがあるかもしれない。相手が赤ちゃんであれ病床に伏した老人であれ感覚が共有できるかどうかが大事だし、その人となるべく一緒にいることだけが幸福である。だから友人であっても恋人であってもなんでもいい。

というかめんどくさいことを言うがそもそも「友人」や「恋人」という言葉で定義されるものになりたくはない。

どうしたらいいのか悩み続けているが、恋人でややズレが気になり、結婚でパズルのピースが完全に合わなくなる。他人との定義が合わない。

人類はよくこんなに難しいものを普及させたなと思う。まあそのピースがはまりきらないから関係性が骨折している場合もあると思うが。

 

話は変わるが成人してから顕著に感じるようになったけど人間の状態(どこで働いていて誰と暮らしているとか)は目まぐるしく変わっていってその度に人の感覚器はびっくりするほど変わると感じる。なので、かなりの確率で「この人のこういう所好きだったのに別の人になってしまったな」と思うことがまぁまぁある。失望に近い。

たまにその現実を見たくなくて感覚が変わってしまった人に久々に会ってみるけどやはり現実は変わらなくて砂よりも水よりももっと無機質な何かを吐くほど食わされている感覚に陥る。

(そういえば食べ物などでまるでなんのストレスも出ないような完全に無機質な食べ物ってないですね。感覚が過敏な身としては完全に無な食べ物があってほしい。)

 

みんな変わりゆく中で自分の「伝える気持ち」は諦めによって崩壊していっていて、それでも昔から秋はココア味のカロリーメイトの匂いがするし、品質の良くないぬいぐるみの触感に安心するし、同じ感覚を失ってしまった友人たちがぼろぼろになってしまったら後先考えずに自分の身を傷つけても守りたいと思う。

 

この文章が的確に誰かに理解されない限りは、広い宇宙の中で存在するかもわからない交流できる生き物を探し続けている。

そういう意味で孤独な宇宙人は今日もこうやって宇宙に信号を送るのです。よーそろー。