誰に話してもそれなりに笑いが取れるエピソードがある。
あれは大学に入るほんの少し前だった。
ワンルームに家具などを設置し終えて「さあ!今から一人暮らしです!はいどうぞ!」という日。
さて自炊しましょうかねと思い初日はハンバーグを作ることにした。
ハンバーグはかつて母と作ったことがあった。
パン粉と合い挽き肉とたまごをこねくりまわして、馴染んだらぱっちんぱっちんやって真ん中をふにゃっとへこませてフライパンで焼けばたしかなんかそんなかんじの料理が出来たと思う。
初日で作るにはちょうどいい達成感も得られそうである。
そんなわけで近所のスーパーでそれらを購入して捏ねてハンバーグのたね(仮)が出来た。なんともまとまりが悪い。まあ焼いたらどうにかなるでしょ。肉とかなんか焼いたら固くなるみたいなとこあるし。
そしてボソボソの丸い肉の山のようなハンバーグのたね(仮)をフライパンに置いた。
途端に瓦解するハンバーグのたね(仮)。
フライ返しで一箇所にまとめるものの、そぼろが集まってるに他ならない。なんで????
その瞬間にハンバーグは諦めた。
そぼろだ。うん。
あのー…
そぼろをね、
そぼろをごはんにかけたいと思ってね。うん。そうそう。
そしてジュウジュウと焼きあがったそぼろ。
味付けに困った時用に買っとけという母の教えからたまたま買っていた焼肉のたれをここぞとばかりにかけたらめちゃくちゃ美味いそぼろが出来上がった。
そうじゃない、違うんだ。自炊の初日にそぼろって。
美味しいけどさ。
次の日、めちゃくちゃ気合い入れて買ったかわいいお弁当にひっそりとそぼろご飯を入れて大学の隅でこっそりと食べた。
箸じゃなくてスプーンを入れればよかったね。なんてったってそぼろは掴みづらいからね。
ボロボロとこぼれるのは果たしてそぼろだったか、わたしの涙だったか。
ーーーーーその後、料理をする度あのそぼろが頭をよぎりついにわたしは自炊を辞めた。コンビニ飯最高〜。