ネタバレ含む千年女優のレビュー

皆さん見ました???千年女優

わたしはヒラサワから今敏を知ってパプリカ(の、狂った博士がトンチキな事いいながら飛び降りるシーンのみ知ってる)とかパーフェクトブルーしか知らんのですが、それらはいつか見たいと思ってたんですよね。

特にパプリカは筒井康隆の小説で読んでもきっと意味がわからんじゃろと思ってひたすら機会を伺っています……

パーフェクトブルーはこの前シネフロで上映されたんですがチケット完売で買えず……グギギ……

千年女優は色彩の派手さくらいしか知らなくてモノノ怪みたいなかんじかな〜と思いつつ全く情報を入れずに見た次第です。

 

で。見終わってさ。

 

後半泣くところだったわ!!!!

もはや老いた千代子さんの姿がヒラサワに見えてきたよ!!!今敏の憧れの人がヒラサワで初めて一緒に仕事をした作品らしいのでそもそも今敏がこの作品でヒラサワについてバチクソ重い愛を表現してたとしてもなんらおかしくはないのですがね。

ちなみに結構若くして今敏は亡くなっているのですが、出棺の際にこの千年女優で使われたLOTUS-2を流したそうでヒラサワも「行ってらっしゃい」と声をかけたそうでワア〜〜〜〜ッ!!!!ってなります。

死んでしまったら憧れの人から物理的に離れるじゃんと思うけど、主人公をなぞるのならヒラサワをまた遠くから追うのが楽しみになるんですかね。憧れの人を追ってる自分が好きと千代子が述べていたので。はぁ……(深い溜め息)

 

正直映画としては内容の把握が難しい作品ではありましたよね。

70歳になる伝説の女優島倉千代子を取材するために「贈り物」を用意してスタッフをひとり連れて山奥までやって来た監督。

いざ、千代子に「ご自身の今までについて好きにお話してください」と言い取材し始めると、おそらく(この辺から曖昧になってくる)自分が女学生時代に一目惚れした「鍵を持った絵描き」を追うために満州に行きたかったところちょうど映画女優としてスカウトされてそれが満州で撮るということだったので芝居なんかどうでもいいけど家族の反対を押し切って引き受ける。で、満州で映画を撮り始めて八卦に「その人は北にいる」と言われたんで映画の撮影をほっぽり出して北へ向かうも乗った汽車が襲撃に合う。結局のところその八卦は千代子を妬むベテラン女優が映画の助監督に入れ知恵されて八卦にわざと危ないところへ行くように仕向けられてた訳ですが。

なんやかんやでそれから真面目に映画女優をやっていたら絵描きから託されていた鍵をなくしてしまう。鍵をなくしてから一気にしょんぼりして助監督と結婚してみるも部屋からなくしていた鍵を見つけてどういうことかねと問いただすと上のような策略をされていたことを白状されておい!!!!ってなる。

で、これまでちょいちょい出ていた顔に傷のある男(絵描きを思想犯の罪で追っていた)が千代子の前に現れて絵描きから手紙を託されたと千代子に手紙を渡す。それを見て飛び出してひたすらに北海道の雪原を目指す。絵描きは故郷である北海道で絵を仕上げたいと言っていたからね。

辿り着いた先に絵描きはおらずイーゼルにかけられた絵がぽつんと置いてあり、絵の中には雪原と絵描きの後ろ姿があった。見ていると絵の中で絵描きはどんどん先へ歩いて見えなくなってしまう。

その頃取り残された顔に傷のある男が助監督に「思想犯として捕まえた絵描きは拷問にかけたのちにこの手で殺めてしまった」と泣く。

以上を当時撮ってた映画とごちゃまぜの内容で千代子が説明するんだけど、雪原の話をしている時に倒れる(描写としては臨場感たっぷりの演技を交えながら説明しているので、雪原に千代子が倒れた描写と本当に千代子が今倒れた描写が重なる)。

どうやら千代子は長くないらしく、頓服っぽいものを飲んで「まあ老人なんてこんなことよくあるから」と続きを話す。

そのあとの映画でオープニングで出ていた「宇宙まで絵描きを追う」という作品をなぞり、途中で本当に今度こそ倒れて病院に運ばれる。

監督は「またの機会にしましょう、医者も回復すると言っていましたし」と言うが呼吸器をつけた千代子は「嘘が下手なのね」と言い宇宙の果てまで絵描きを追う話を最後まで語る。結局会えないんだけど。

最後に千代子が「あの人を追いかけてるわたしが好きなの」と言いそのまま息絶えてしまう。

で!!!!終わりなんですがここで流れるLOTUS-2!!!!わあーーーーーー!!!!今敏ィーーーーー!!!!

 

千代子が語る映画の中では宇宙の映画の話好きだったなあ。SFが好きなのと夢見るようにキラキラしている千代子の目が好きなのかも。

それはそうとして、迫真の千代子の演技で取材に来た監督は回想内の映画のお助けキャラに都度都度変わる訳ですが、カメラマンの人は変わらなくてなんでなんかなと思ったりしました。多分「鍵を持ってきてくれた」ことと、千代子を地震の瓦礫から救ったことがあるから「あなたはいつもわたしを助けてくれる」と千代子が言っていたのでわざと映画の中に引っ張りこんだのかなあと。カメラマンに関しては別に思い出や恩ないしな。ゆくゆく話が進んでいったらカメラマンも役になるかなと思ったけど。あと監督は千代子に会うまでに多分全映画を再履修してたっぽいからより引きずり込みやすかったんでしょう。

あと、千代子は絵描きとのチャンスをあらゆる場面でわざと逃してるなあと思った。「なんの鍵なのか」を千代子から宿題にさせてと言ったり、別に鍵そのものについて思案している描写もないし、汽車の中で見た新聞に思想犯として指名手配されているらしい文があり、顔も名前も確認のしようがある。その辺も絵描きそのものより「追いかけてる自分が好き」なんだろうなあと思う。顔に傷がある男が「絵描きを殺めてしまった」と言っているのを回想出来ているのになおも追いかけようとしているあたりも裏付けになるだろう。

あと時代劇の映画から出始めた謎の「千年生き続ける呪いをかけるあやかし」はわずかな老いを感じた千代子そのものでしょうね。70歳の千代子が「こんな姿じゃあの人に会えない」と言う姿とこのあやかしが重なって映ってるシーンからもそうだろうと思う。

「そなたが憎くて愛おしい」と言っているのは若くして純粋に追いかけている自分について今の自分が羨ましくて呪っているみたいなもんだろうかね。若い同担(若い千代子)に対しての妬み(どうあがいても戻れない今の千代子)みたいなかんじに見ているのかも。

 

ンハーーー……いいですね。

普通に映画見たい人からしたら「なに???」ってなるかもしれんけど、ヒラサワ推しとしてみたらわかりすぎてンハーーーってなるし、一生鼻先ニンジンでいてほしい!みたいな恋心ってあるよね。ある意味とてつもないひとりよがりだし、もはやこうしてはっきりと描いてしまうと絵描きに失礼な感情なのかもしれんしもはや顔に傷のある男に追いかけられてるのとあまり変わらんのかもしれんが、まあこういうもんですわね。ハオ。